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最高裁判所第一小法廷 昭和43年(あ)2531号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人大谷季義、同楠瀬正淳の上告趣意のうち、違憲(三一条、三四条、三七条違反)をいう点は、実質はすべて単なる法令違反の主張であり、判例違反をいう点は、所論引用の判例は、判決宣告後に被告人の選任した弁護人の上訴申立を肯定したものであって、判決宣告後に被告人の妻の選任した弁護人が控訴申立をした本件とは事案を異にし、いずれも適法な上告理由にあたらない。(一審判決後被告人の妻によって選任された弁護人は、被告人のため控訴申立をする権限がないとした原判決の判断は、正当である。仮りに右の如き弁護人が被告人のため上訴申立をすることができるとすれば、本来被告人のため上訴する権利を有しない配偶者が弁護人を選任することにより被告人のため上訴する権利を有するのとひとしいこととなって、不合理である。)

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠)

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